酪農研修大会の報告
こんにちは。kazです。
今日は11/17に行われた研修大会のおさらいとしてレポート報告します。
【乳牛繁殖管理】
①「いま一度受胎率向上のための基礎知識について」
②「どうして発情が来ないのか?~現状を知る~について」
【酪農経営】
③「乳用牛の健全性向上・生涯生産性向上のための・泌乳持続性改良と乾乳期短縮技術について」
④「海外の遺伝資源と改良情報について」
ちょっと③がおもしろかったのでここでレポート
乳用牛の健全性向上、生涯生産性向上のための
・泌乳持続性改良
・乾乳期短縮技術について
講師 農研機構北海道農業研究センター 田鎖 直澄 先生
◎泌乳持続性改良
日本飼養標準「乳牛」2017版(製本終了)
新章として、「泌乳曲線の平準化」取り上げられている。以下の構成
1 乳用牛の泌乳持続性育種改良と飼養標準
2 乳用牛の泌乳持続性の経過
3 既存の高能力牛の栄養管理上の問題点と泌乳持続性
(1)産乳の飼料栄養効率
(2)乳期によるエネルギーバランスの問題
4 乾乳期短縮技術および分娩間隔との関係
5 日本飼養標準・乳牛での泌乳平準化の考え方
乳期の進行に伴う乳量低下は「必然」 → 常識からの脱却
泌乳持続性改良と乳量生産力の改良は両立可能でもあり、今後日本の乳牛の泌乳持続性は向上することが期待されている。
酪農の現状↓
供用期間の推移
平均除籍産次
2002 → 4.2 2007 → 4.0 2012 → 3.5
乳用牛の供用期間は徐々に減少しており、2014では3.4産となっており、北海道ではフリーストール牛舎の増加により、肢蹄故障の理由が増している。
乳量生産の様相変化↓
ここ35年間の分析の結果、305日乳量は2005年から伸びが鈍化。これは穀物飼料の高騰が理由。ピーク乳量については、1990年~1995年ころから伸びが鈍化している。原因は不明だが、乳量改良が続く飼養環境において、「泌乳持続性の高い乳牛が生き残っている」と解釈する。
泌乳持続性の健全性↓
イスラエル48万頭の搾乳牛を分析した結果。持続性の向上により、泌乳後期の過肥を防止し、受胎率の向上、在群期間の延長が望めるデータがある。経営的な観点で、乳房炎の罹患率を調査すると、低持続と高持続では、高持続のほうが罹患率が低かった。伴って、1頭当たりの年間疾病治療費も少なくなっている。
栄養管理上の問題↓
現在の飼料の摂取量効果は、PCM45~55㎏が頭打ちになる。理想とはちがう。ピーク時は、効率限界に到達していても、後期の乳量には効率改善できるのではないかと考える。現在の平均的な乳生産量でも、持続性が低ければ泌乳初期には限界に近い状態。
ということは、持続性が低いとピーク時には、飼料の効率限界にきており、後期では肥るという悪循環がおこる。低持続と高持続で同じ泌乳期乳量だとしても影響が違う。
初期に配合は高価でやらない→後期に粗飼料に肥る→泌乳初期の痩せを許容→痩せ肥えの限界があり高能力が止まる→持続性向上の意味がない→悪影響
持続性改良の効果
・自給飼料生産費が他の酪農強国と比べて高い
・流通飼料への依存度が高い経営が多い
・流通飼料も輸入依存のため相対的に高価
・設備投資、人件費も相対的に大きい
→ これらの問題のある、わが国では特に有効になるはず
(放牧依存度が高い場合は、持続性向上にあまり意味がない)
(飼料費が安い環境では、栄養効率の改善の重要度のほうが高い)
◎乾乳期短縮技術について
乾乳期短縮の背景
乾乳期60日 → 伝統的 = 改良と改善で高乳量化
高泌乳牛の問題点
泌乳初期の負のエネルギーバランス→体脂肪動員→脂肪肝→免疫機能ダウン→乳房炎増→子宮内膜炎増→繁殖性ダウン
乾乳期短縮の利点
・乾乳時の乳量が減少し、乾乳が容易になり安全
・泌乳末期の追加乳生産により乳代収入が増加
・移行期の飼料変更回数が少なくなり栄養ストレスが減る
・移行期の群分け回数が減り、社会的ストレスが減る
・泌乳初期の急激な乳量増加が緩和、乳房や身体へのストレス軽減
影響度
・30日までの乾乳期短縮では、次乳期のの乳量減少は極めて少ない(2~6%)
・1か月間の搾乳延長により、次乳期の乳量減少分を補填可能
・初産牛を乾乳短縮した場合、経産牛よりも次乳期の乳量減少が大きい
3産以上の牛
・泌乳前期のピーク乳量が低いが、泌乳中期は乳量の差がなかった。
2産牛
・1乳期にわたって、乳量が低くなった。
総乳量
・2産牛では、60日乾乳の方が多く、3産以上では短縮した方が多かった。
初乳
・乾乳期を完全になくさない限りは悪影響なし。
子牛
・生時体重に影響なし
乳腺
・乾乳期間が25日以上あれば、乳腺の再生は損なわれない。
・乳房の健康と乳中体細胞数に関しての悪影響はなし。
代謝及び健康
・ピーク乳量の低下により、エネルギーバランスが改善
◎泌乳持続性・日本飼養標準とこれを利用した研究展開
酪農家ではインテリジェンス化が進行。飼料設計では乳量を中心要因としてきた。インテリジェンス化している場合には持続性=乳生産の変動も要因として利用できる可能性がある。乳期中の乳量変動を予定した飼料設計が可能となる。
泌乳持続性の解析=泌乳パターンの解析=乳牛の健全性の向上
以上
勉強になりました。