全酪連セミナー2018に参加して③
『効率的な繁殖のための移行期管理』
分娩前に異なる処理を受けた乳牛と妊娠までの日数の関係
やせた牛ほど、蹄出血しやすく、やせた牛群には、蹄病の問題が付きまとっている気がします。
制限というポイントは、エネルギーを制御した餌を食わせることがポイント。クロースアップ期の牛の要求量は15メガカロリーで、良質なサイレージにミネラルやミックス等の粗飼料を加えると、1日の要求量は容易にオーバーとなる。
分娩前には乾物摂取量を落としたくないので、栄養の低い乾物をたくさん食べさせる策を講じる。見た目に肥ったと思わなくても、内臓脂肪はしっかりしていることが多い。BCSだけでは判断できない。内臓脂肪は肝臓の周辺につきやすいということが難点。なぜなら、肝臓=直接血管系がつながっている内臓の脂肪組織。それら関連する組織の脂肪が75%も増加してしまうから。美味しくない乾物を食わすには、裁断してTMRに混ぜることがよい。
糞中のデンプンはデンプンの消化率の低さと関連する。
消化が遅い → パイのような糞、柔くなる。
ルーメンpHは物理的有効繊維により上昇する。牛は最大1日57リットルの唾液を生産する。唾液はルーメンに入る重曹の約半分に寄与する。この唾液の分泌量は反芻の時間に寄与する。コーンサイレージの40%は繊維。
不消化繊維 UNDF 無限大の時間で測定しても消化されない。従来は、NDFは採食量、ADFは消化性。現在は、UNDF240(240は時間)がどのくらい入っているかの飼料計算が主流となってきている。現場での泌乳生産性がどの程度あるサイレージなのかは、UNDF240計ることでわかる。少なければ良品質。高泌乳牛群のためのコーンサイレージ品質とは。
NDF↓ リグニン↓ UNDF240↓ NDF30↑ TTNDF↑ デンプン↑
高品質とはNDF↓ リグニン↓ UNDF240↓に共通する。
意図した目標や達成したい仕事のために時間、労力、あるいはコストを有効に利用できる範囲を示す。最小の無駄や費用、努力で、特定の結果を効率よく導き出すことに集中し、実行できる能力があってこそ達成可能となる。一般的に、効率は測定可能な概念であり、入力に対する出力の比で量的な数値が定められる。効力とは違う。
乾乳牛の飼料推奨
粗蛋白CPではなく、代謝蛋白MPで飼料設計をMPというのは、NDFやUNDFなどが出ないと出せない。蛋白CPはアミノ酸でできている。過剰なCP給与は、過剰な窒素が吸収され牛乳に含まれてしまう。そのため尿の成分が牛乳に出てきてしまう。MUN乳中尿素態窒素にでてくる。血中の尿素態窒素があがると、受胎率が悪くなった。子宮内PH低下=酸化してしまう。酸化を治そうと血液中のミネラルが子宮に持っていかれて、連鎖的に受胎に影響がでてくる。
メチオニンは胚死滅ロスを防げるか?
ルーメン保護メチオニン給与による実験
(注)メチオニンとリジンは取り扱い難しいので飼料設計は慎重に
受精後28~61日の妊娠ロスの結果、初産牛は一切影響なし、経産牛は1/3のロスにとどまり優位性を認めた。またメチオニンを給与した方が、胚の直径が大きかった。これはインターフェロンタウの分泌に影響を及ぼす。
要約
・分娩後ただちに高い乾物摂取量促進
・ルーメン保護メチオニン給与は、乳牛の血清中と卵胞液中のメチオニン濃度を上昇させる。
・乳牛の妊娠の成功は、移行期中に始まる。
・分娩前から妊娠確認までのアミノ酸(メチオニンとリジン)のバランスをとることは、乳量と乳成分のみならず、胚の品質を向上させ、早期胚のロスを減少させる可能性がある。
・適正なCP管理 乾乳なら13% 泌乳は16%
・ルーメン保護メチオニン 乾乳15g 泌乳20g/日
・ルーメン保護リジン 乾乳26g 泌乳36g/日
・MUNは8~12mg
暑熱ストレス・・・単なる暑さだけではない
牛は体温を調節するのに、放熱をする。環境温度が動物の体温に近くなると、動物の冷却システムが損なわれる。暑熱ロス アメリカ 40憶ドル 世界 150憶ドル
温度湿度指数 → THI 牛の不快指数 乳量はTHI増加につれて減少する。
乳量を落とす影響は、湿度の影響が最も大きい。夏場はナトリウムとカリを増加給与すると、乾物摂取量があがる。
アルカリ化させる陽イオンミネラル = ナトリウム カリ
陰イオンミネラル = 塩素 硫黄
4大ミネラルとして君臨 夏・搾乳は陽 乾乳期は陰 が多いほうがいい
DCAD = 飼料陽イオン陰イオン差
負のDCAD = 代謝病を予防する 乾乳牛
生のDCAD = 乳量と乳成分を増加させる 泌乳牛
乳熱・低カルシウム血症
起立不能になっている場合、血中Ca<5mgだろう。見た目に現れないものが難しい。カルシウムは筋肉の正常運動に必要とされる。最大の問題は、泌乳が始まると言うこと。一時的に骨からのカルシウム調達が促進される。ほとんどすべての牛が分娩後低カルシウム血症を経験している。牛が利用可能なカルシウムが8gとされる。分娩前に負のDCAD飼料を給与することは、分娩後のカルシウム吸収力を促進する。分娩後の低カルシウム血症を抑制するには、負のDCAD飼料を分娩前に与えることだ。しかし、この時、カルシウムを与えないと、深刻な低カルシウム血症を起こす。
飼料へのビタミンE添加により減少した疾病 → 乳房炎、胎盤停滞、乳房浮腫
イリノイ大学推奨
移行期 ビタミンA 100000 D 25000 E 1820
乾乳期 E 1210
負のDCAD飼料が効果的かどうかの測定 定期的に尿PHを測定する。 適正値は6.0以下
クロースアップ期の測定で、7.0を超えていると、乳熱の危険性あり。
熱の減少
夏は飲水量が増え、尿量が増える。ミネラル不足に陥る。ミネラルを与える。乾乳牛を冷却することで、乳量に差が出た。効果的(2.3~7.5㎏のプラスとなっている)
7~8月の暑い時期に乾乳を過ごした乾乳牛は、体表の血管を開き放熱する。子宮への血液の流れが遅くなるため、分娩が早くなったり、やせた子牛が生まれたりする。
夏場の暑い時期、受精卵というのは、発情日から排卵時にある発熱による感受性が高く、卵が弱くなり流れやすくなる。ところが卵が4日目以降まであるとなるとヒートショックプロテインという耐熱蛋白質をつくるので、熱に強くなる。受精卵移植が夏場の暑い時期に有効なのは、7日たっている卵を入れるという、暑熱対策の一つといえる。
外気の湿度に関係なく、ソーカ―で濡らすことには効果がある。
第一は水、第二は日よけ、第三はファン、第四はソーカ―
ファンは掃除せよ、換気効率が落ちている。また、循環ではだめ、換気を重視する。空気を外にだす。
18度以上であれば、無条件でファンを回すべき。体温を把握することが重要。冷えているかどうか。
冷却すべき場所 重要順
1. 搾乳センターと待機ペン
2. 乾乳牛
3. 分娩ペン
4. 産褥牛と初産グループ
5. 高泌乳群
6. ホスピタル・ペン
7. 作業エリア
夏季の給餌時間をかえることも。。。飼料の60%を夜8時に